現実と仮想現実が重なる『星の欠片の物語、ひとかけら版』

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VRのコミュニケーション謎解きアドベンチャー『星の欠片の物語、ひとかけら版』をクリアしました。VR専用ゲームでは1、2を争うであろうPS Storeでの評価件数。

リリース後のアップデートで改善

このゲームは2018年1月26日にリリースされ、初期の感想としては「テンポが悪い」「謎解きが難しすぎる」という声が目立ちました。しかし、リリースから6回のアップデートがあり、ユーザーの声に対応するようにテンポと難易度に関するアップデートが数回行われています。これにより、初期のプレイ感とは大きく違っているのかなと思います。

 

2018年2月7日

  • 同じ所を複数回調べに行く時の台詞を省略する事によってテンポを向上した
  • 一部謎解きの難易度緩和
  • 表示文章の一部調整

2018年2月14日

  • 特定条件下でフォルダを持ったまま行動する事に対処

2018年3月6日

  • ゲーム中に出現するフォルダを2枚追加する事による難易度調整
  • 既存フォルダの一部文章追加と表記修正
  • 同じ場所を複数回調べる際に台詞を省略する場面を増やした
  • ヒロインを見てから反応するまでの時間を若干短縮
  • その他難易度調整

2018年3月7日

  • 進行用セーブデータを削除しても最初から始まらない場合がある事に対処
  • Ver1.04以前のセーブデータを使った際にフォルダの位置がおかしくなる場合がある事に対処

2018年3月27日

  • フォーカスロックを掛けたらヒロインの顔を見なくても調べに行く様にした
  • 調べ物をした後毎回プレイヤーの前に戻らない様にした
  • 導入部の科白を追加調整
  • その他微調整

2018年4月26日

  • 挙動の整合性を調整
テンポが劇的に改善

大きな問題であったであろう「テンポが悪い」。

 

このゲームにおけるプレイヤーの操作は、少女に調べさせたい物を見るだけです。コントローラーは使いません。初期Verですと、調べたい物を見る→少女を見る、という2つの手順で調べるアクションを行うシステムだったようですが、今のVerは、調べたい物を数秒見るだけで調べるアクションを行います。

青いブロックを装置にハメ込みたい時に、初期Verだと、青いブロックを見る少女を見る装置を見る少女を見る、という手順になりますが、今のVerだと青いブロックを見る装置を見る、のみ。

さらに「調べ物をした後毎回プレイヤーの前に戻らない様にした」ともあり、初期Verでは、物を調べた後にプレイヤーの前に戻るのを待つ時間もあったようです。

「同じ所を複数回調べに行く時の台詞を省略」もテンポ向上に繋がっている。謎解きがわからないので総当たりで繰り返し調べてみるというような状況にもなりますので、台詞の省略は有難い。

これらのアップデートでテンポが劇的に改善されているかと思う。

 

とはいえ、このゲームの性質上、他のゲームに比べるとテンポは悪い。スキップや早送りはできませんので、少女の台詞は全て聞く必要がある。行動も速くはない。頭の中で「ここをこうして、次はこうして……」という謎解きのイメージがあっても、それをサクサク実行できないもどかしさは感じます。

ジャンルが「コミュニケーション謎解きアドベンチャー」であり、コミュニケーションもゲームの軸。謎解きアドベンチャーをやりたいという意識だけだと、煩わしく感じてしまうようになります。むしろコミュニケーション部分が1番で、コミュニケーションするための謎解きとも思える。

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難易度緩和

もう1つの問題「謎解きが難しすぎる」。

 

「一部謎解きの難易度緩和」「フォルダを2枚追加する事による難易度調整」「その他難易度調整」と、難易度調整に関するアップデートが3回ありました。

 

クリアまで迷いながら3~4時間ほどかかりましたが、難易度に関する問題は感じなかった。まず調べられるポイントが少ないですから手当たり次第に調べる方法も有効ですし、ヒントとなるフォルダもある。どのフォルダが追加されたのかはわかりませんが、気付きにくいとされる部分に加わったは想像できます。

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アップデート後の再評価

少し話が逸れますが、ゲームにおいて、昔と今とでは事情が違う事は多々あります。パッケージ版とダウンロード版の事だったり、プレイ動画やSNSでの拡散だったり。そして、アップデート後の再評価も、新たに加わる現代の事情の1つになるかと思う。

 

アップデートが必要な事情は様々で、手抜きのような物もあれば、完成度は高いけどユーザーの声を聞いてさらに良くするとか、長期的なDLC配信と並行して無料アップデートでも強化するとか、なんにせよアップデートはあって当たり前の時代。大作では『ドラゴンクエスト11』がアップデート無しですが、結局は海外版でダッシュやカメラ挙動の改善などがされている。

一昔前はバグチェックを手抜きしてアップデートで対応する悪しき習慣として見られていた印象も強いですが、今はリリース時から評価の高いゲームをより良くするためのアップデートも当たり前に見られる。初期Verよりも良くする余地がないゲームは存在しないと言ってもいいほどですので、リリース後さらにゲームの質を高める運営方針は良いかと思う。

 

今の時代、リリース時と半年後で分けてレビューするようになっても面白い。もちろん変化が大きかったタイトルのみに限定されますが。個人的にはかなり有用。半年後となるとセールされる時期にもなり、再評価されたゲームが安く買えるのは有難い。『星の欠片の物語、ひとかけら版』も1月26日と7月26日では評価が大きく変わる事になりそう。『グランツーリスモSPORT』『真・三國無双8』『実況パワフルプロ野球』あたりも、半年後や1年後の再評価でどのように変わるか見てみたいタイトル。

 

ソフトが多すぎて発売日の競合でスルーする、70%ほどのセールも当たり前になった、アップデートで初期の問題が改善される、という3つの要因から、半年後や1年後の再評価は欲しいところ。もしくはDLC入りの完全版も多いので、それを改めて評価する。

人に紹介したくなるゲーム

このゲームは、星の核に1人残されて記憶と知識の大半を失った少女と、プレイヤー自身がコミュニケーションをとって謎を解くゲーム。脱出パズルみたいな感じですね。

謎解き 

操作は上記したように、調べたいオブジェクトをプレイヤーが見ると、少女がそれを調べたり持ったりする。ブロックを持たせて装置にハメ込んだり、スイッチを押したり、あやしい場所を調べてもらったりしてパズルを解く。

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落ちているフォルダがパズルのヒントとなっている。パズルの質としては、それほど高くないという印象。脈絡がないように思える仕掛けも多く、頭を使って解けたという手応えは弱かった。仕掛けを見て考えるというよりは、フォルダの読み方が頭を使う部分。

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コントローラーを用いないので、自分が動いて360度見ることになります。Moveの場合は横や後方の認識精度が悪いという問題がありますが、VRヘッドセットには問題ない。個々の部屋の環境で、360度に対応しづらい人もいるかもしれない。ただ、この仕様も大きな意味があり、驚きを見せてくれた部分でありましたので良かった。

グラフィック

『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』や『乖離性ミリオンアーサーVR』をプレイした時もそうでしたが、アニメ調のグラフィックは粗が目立ちにくい。1つ1つのオブジェクトはシンプルに描かれていますが、アニメ調のキャラクターと合っており、グラフィックが悪いという印象にはならない。

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ゲームの印象を変える1つのアイデア

とても面白いのが、プレイヤーは現実のプレイヤー自身。他の世界を覗き見る装置(PSVR)で星の核を見ているという設定。現実と仮想現実が重なっています。最初、設定としては普通に考えられるものだという印象で、別にスゴイとは思わなかった。しかし、オチは革新的でゲーム史に残るひとネタだという衝撃を受けました。「リアルとVR」「自転車創業(開発元)」「ひとかけら版」といったキーワードが上手く昇華されている。オチへの持っていき方と内容で、購入してプレイした満足感を感じた。クリア直前までは「2,800円は少し高い」と言おうと思っていたけど、これは言えなくなる。

 

1発目のネタだから面白いし衝撃を受けたというのもありますけどね。2発目からは白ける要因にもなりかねない。他のゲームでは味わえないオリジナルのひとネタは強い。こういうのを持っているゲームは魅力が大きい。

 

クリアすると人に紹介したくなるゲームであり、PS Store評価を見たら案の定236件も評価されていた。有料のVR専用ゲームとしては異例の多さであり、前日にリリースされていた『The Inpatient -闇の病棟-』は41件。個人的にPSVRの最高傑作である『The Elder Scrolls V: Skyrim VR』ですら148件です。PSVRのアイコン的なタイトルである『PlayStation®VR WORLDS』でも210件。『星の欠片の物語、ひとかけら版』の評価件数が尋常でないことがわかると思います。

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プレイ前とプレイ後では大きく印象が変わったゲーム。雑な言い方をすれば「作りかけの美少女ゲーム」という印象でしたが、それも含めて「ヤラレタ」という感じ。VRならではの現実と仮想現実の重ね方で、メタフィクションの先に行ったかもしれない。その領域だからこそ感じられるキャラクターの存在感があり、コミュニケーションゲームとして今までにない距離感になる。だからこそ普段はしないStore評価をする人も多かったのでしょう。この人を動かす力、スゴイです。

今後、コミュニケーションゲームとして1歩先に行ける可能性がある。現時点では。