映画作品をゲーム機に移植した異色の『レイト・シフト(LATE SHIFT)』感想


2019年6月20日にリリースされた『レイト・シフト(LATE SHIFT)』の感想。

インタラクティブシネマ

インタラクティブシネマとは、映画のようなシナリオと映像演出を持ちながら、プレイヤーがストーリーを進行させるマルチメディアコンテンツのこと。

 

インタラクティブシネマというジャンルに入るゲームは何本かありますが、『レイト・シフト(LATE SHIFT)』は世界初のシネマティックインタラクティブ映画として2016年に映画館で公開された。観客がスマホで行動を選択し、上映中の映画に反映されるという画期的なものでした。それが家庭用ゲーム機に移植されたわけです。

 

上記のような事情から、シンプルでピュアなインタラクティブシネマになっています。映画を見ながら、ところどころに出現する選択をするだけで最後まで進む。


映画として不自然にならないような選択肢の出し方は上手いです。映像が止まらず、なるべく役者も不自然に指示を待っているように見えないタイミングで選択させている。映画館で上映される作品らしく、映画としての見え方はこだわっていると思う。しかし、選択を急がされるので、ゲームとしては遊びにくいところもある。

 

1周するのに1時間~1時間30分ほど。映画館でなら世界初の試みでワクワクできただろうし、観客全員で選択を共有しながら楽しむ1周が面白かったと想像できる。家庭用ゲーム機では、繰り返しプレイして選択による変化を楽しむ魅力も大きいかなと思います。

ツボを押さえた選択シーン

行動を観客が選択する映画ということで、それを意識したシチュエーションが多かったです。オークションの入札とか、従うか裏切るかとか、拷問時の選択とか。ハラハラするシチュエーションを作って観客を迷わせるのは、インタラクティブシネマのツボを押さえていたと思う。


反面、主人公が自分語りをするような場面はあまりなかった。行動の選択を観客に委ねるということで、善にも悪にもなれる主人公の過去や人間性をあまり見せないのは特徴的だと思った。ヒロインとなるメイリーンも同様。それにより、客観的に見る人間ドラマとしては、やや希薄になったのも感じる。
これも映画館で上映する作品の特徴かもしれない。主要なキャラクターたちに中立ぶらせる必要がある。良い奴と嫌な奴をはっきり見せてしまうと、観客の中で選択の多数派が固定されてしまい、何度上映しても同じ結果になりやすいはず。それでは観客に選択させる意味が薄れるので、なるべく50:50に分かれるような工夫を入れていると思う。これが家庭用ゲーム機専用なら少数派の個人の意見が反映されるので、あえて嫌な奴に協力するという選択もされるし、キャラクターに中立ぶらせる必要もあまりない。

 

1つ1つの場面ではハラハラして選択を楽しめるし、別の行動をとっていたらどうなっていたのかも気になって周回もしたくなる。しかし、映画作品として見終えると、心に沁みるところがほとんどなかったことにも気付く。インタラクティブシネマの面白さと難しさを感じました。

チャプターセレクトとムービースキップがない

映画館で上映するための作品でしたので、チャプターセレクトとムービースキップは入れる必要がないと考えたんでしょうかね。家庭用ゲーム機に移植する際も、そこまで手を加えずに移植されたようです。
さらに言えばセーブデータもオートセーブが1つだけ。

 

ゲームソフトとして見てしまうと、特に2周目以降のテンポの悪さは隠せない。ビジュアルノベル系の作品は、周回プレイ用のスキップ機能やバックログなどが定着していますので、毎周映画上映体験の『レイト・シフト(LATE SHIFT)』は不便に感じる。

 

統計がないのも寂しいですね。世界で〇〇%の人がこの選択を選んだってやつ。選択の面白さがゲームの大きな魅力ですので、統計は面白さを増してくれる要素。

ゲーム的な味付けとして機能したトロフィー

映画館で上映されたインタラクティブシネマを、そのまま家庭用ゲーム機で体験できるのは良いですが、家庭用ゲームとしての最適化はされていない印象。

 

そんな中、トロフィーの存在は大きいと思います。ゲーム的なチャレンジとしての、ささやかな味付けになっている。
プラチナトロフィーも獲得しやすいです。1,480円で7つのエンディングを見られて、トロフィー100%で終えられるのは、スッキリできてゲームとしての達成感もある。
『レイト・シフト(LATE SHIFT)』プラチナトロフィー攻略 - PS4ちゃんねる Pro

字幕の表示と誤字

他のゲームと比べて字幕の表示が短いところがあり、ゆっくり読む余裕はないです。読めないほどではないですが、他のゲームと同じような感覚で油断していると間に合わないところもある。日本語音声には対応していません。

 

チラホラと誤字がありました。脳内変換で読めるレベルだったので、意味がわからないようなところはなかったです。

インタラクティブシネマとビデオゲームの違い

メタスコアは59点(15件)と低いですが、これはやはり家庭用ゲーム機のソフトとしての最適化が甘くて、アドベンチャーゲームやビジュアルノベルらに求められるようなシステムが不十分であることや、映画館で上映する作品の事情と仕様が家庭用ゲーム機とは違うところが大きいと思う。インタラクティブシネマをビデオゲームの基準で採点する難しさがあり、ゲームとして減点ポイントは多いけど加点ポイントは少なくなる。
インタラクティブシネマとして楽しめた。自分の選択がストーリーに影響を与えながら展開していく映画の面白さと没入感。1周目に退屈な時間はほとんどなかったし、面白い選択のさせ方ができていたと思う。ゲームとして見れば60点でも、インタラクティブシネマとして見れば80点という感じ。

 

PS4でインタラクティブシネマは多くないですから、1,480円で体験できて満足です。元々が映画作品だからこそ、1,480円という低価格で出せたのだと思います。価格の割に内容は豪華。
ビジュアルノベル系のゲームとしてではなく、上映に参加する感覚でプレイしたほうが良いと思いました。