2003年に出るはずだったシェンムー3のような『シェンムー3』


2019年11月19日に発売された『シェンムー3』のクリア後の感想。×決定でプレイしているので人によっては記事中の×が逆になると思う。

シェンムーらしいシェンムー3

本作は18年振りのシェンムーの新作として、良くも悪くもシェンムーらしいシェンムー3になった。これに尽きるかと思います。

密度の濃い世界

他のゲームと大きく違う魅力はロケーションの作り込みとそこに住む人たちの命の吹き込み方。


舞台となる片田舎の白鹿村と大都会の鳥舞。
白鹿村では行かなくてもいい場所にその土地の生活を感じさせる風景があり、何気ない虫の存在などでハリボテの作りものではない生きている村だと感じる。色合いも素敵。


鳥舞という大都会は観光気分になってワクワクさせられる素晴らしい舞台。広くて店がいっぱい。初めて鳥舞を訪れた時は感動しました。最初に田舎を見せておいてから大都会を見せて驚かせるのもベタながら上手いです。クセのあるゲームでもあるので、白鹿村でゲームをやめちゃう人も少なくないかもしれませんが、鳥舞を体験しないのは非常にもったいない。強いて悪い点を言えば、鳥舞は店の多さのわりに通行客の少なさを感じます。


「これぞシェンムー」という2つの舞台を思いっきり肌で感じて、散歩を楽しめる。ストーリーに関係しない場所の風景や小道具を見て回るのも面白い。舞台の作り込みが素晴らしいから、観光ゲームとしても最上級。これをVRで体験できたら史上最高レベルのゲーム体験になりそうなだなぁとも思いながらプレイ。


そこに住む人々もモブとして配置されたオブジェクトではなく、リアルな人間味を感じる。このゲームのメイン要素となる「聞き込み」がそれを感じやすい部分で、目的の場所を知りたい時に「そこらの人に聞いてみよう」という自然な感覚で喋りかけると答えがもらえる。必要な技書を探す時には、「この人なら知ってそうだな」という人のところに行くと実際に参考になる話をしてくれたりする。自分が現地にいて自然に人と接する感じでゲームが進行する。
答えやヒントをくれるNPCは1人じゃないので、かなり多くのNPCに返答パターンが用意されているんだろうなとわかります。このシステムで作るのはめちゃくちゃ大変かと思う。だから多くのゲームはクエストマーカーが表示されて、対象の人物のところに行くと話が進む。そういう味気無さは『シェンムー』にはない。


その世界が本当に存在するような舞台と人があり、そこでプレイヤーが生活する面白さがシェンムーの魅力のひとつ。新作のシェンムーで、この部分が損なわれなかったのは素晴らしい。クラウドファンディングで資金を集めて、オリジナルには遠く及ばない予算で安っぽいゲームになるかもしれないという不安は払拭された。この規模のゲームからしたら低予算だったと思うが、それを考えると驚異的な完成度。
ボリューム面で『シェンムー2』に遠く及ばないのは仕方なしですが、私はバッカーで$29でしたから、ボリューム面の不満は0です。

生活感

さすがに初代『シェンムー』に比べると生活感は薄れたと思う。日本人から見ると地元じゃなくて中国への旅行ですからね。そんな中でも、午前中は薪割りのアルバイトをして、午後はクンフーの修行をするといった生活サイクルを作るのが面白い。シェンファに「ゴロツキを探してくる」と約束して家を出て、遊戯場でギャンブルをするダメ男にもなれる。こういう部分でも「シェンムーやってるなぁ」と嬉しくなれる。


白鹿村では涼とシェンファが夫婦のような暮らしをしていて、帰宅時の会話パターンも多そうです。私も聞いていない会話がたくさん残っていると思う。

 

のんびり過ごしたいゲームなのですが、18年ぶりに動き始めたというストーリーも気になるのでジレンマはあります。

魅力的なビジュアル

『シェンムー3』の初期のトレーラーで「ショボい」という声が殺到していて、私も同じ感想でした。仮面のような表情の硬さ、モーションのぎこちなさが隠せませんでしたね。

 

初期よりは改善されているとは言え、製品版の『シェンムー3』も人形劇の人形のような表情の硬さは感じますし、粘土で作られたような質感もリアルな人間ではない。でもこれは個人的に好きな部分です。フォトリアル系ではなく、アニメ系でもなく、その中間のゲームCGらしいCGと言いますか、1つの表現方法として好きです。『シェンムー I&II』のイメージから離れ過ぎない進化で気に入っています。『デス・ストランディング』の俳優のCG化と演技は極上でしたが、『シェンムー』がそうなってほしいとは思わない。次回作が出るなら、ほぼこのままで良いと思える。
前作のイメージから離れ過ぎないと言えば声優もそうですね。初見の人が聞いたら棒読みで学芸会レベルの演技かと思うかもしれません。これも前作を意識した演技なのかなと思います。『龍が如く』の堂島大吾みたいに、その喋り方がそのキャラクターの喋り方として自然に受け入れられる状態。

 

個性的なNPCの顔も魅力。村や街で出会う1人1人が、ちゃんと命を吹き込まれた顔をしている。喋り方の個性もある。名前もある。コピペで作られたモブっぽさがないですし、異国の地で出会う顔と喋り方が面白いので、ストーリーに関係ない場所にも行きたくなる。


字幕が大きいのも良いところ。個人的にはあまり気にしないのですが、最近のゲームは「字が小さい」という不満を聞く事が多いです。

 

風景も決してリアルではなくて、お芝居のセットような作り物っぽさはある。しかし、これもキャラクターと調和がとれていて良いと思う。
単純にグラフィックの技術という面で見ると優れてはいないと思いますが、ビジュアル面は他のゲームに比べて大きな魅力を持っている。こういう個性で見せられるゲームが多くない事も背景にある。
プレイ前はトレーラーの印象で「グラフィックは諦めている」という気持ちでしたが、クリアした今は好きな部分に数える。

 

ビジュアル面で残念だったのはシェンファの外見が大幅に変更されたこと。これはプレイ前からわかっていましたが、実際にプレイしてクリアしても良いと思えなかった部分。システムも演技も前作のイメージを壊さないように意識されているように思うのに、なぜメインヒロインの外見を大幅に変えてしまったのかという疑問は残ったまま。

感涙の電話システム

ホテルから横須賀や香港の知人に電話がかけられます。18年ぶりの新作だけど、あの横須賀や香港が生きているという感じで感動した(言っても自分にとっては昨年なんですけど)。過去の映像が流れるのも良いです。ちょっとした会話システムなんだけど、過去作との繋がりを感じられて素晴らしい。


これ18年前に『シェンムー2』をプレイして止まっていた人がやったら、本当に大きな感動を得られそう。

ロードが快適

ロード待ちが気になる場面はなく、快適にゲームをプレイできました。
おそらく鳥舞では部分的に強制で歩かせて裏読みしているんじゃないかと思う。闘技場への道とか強制で歩かせるのは不自然ですからね。エリアで区切ってロード画面を入れるのではなく、そういう工夫で1つの大きな街を表現しているんじゃないかと。まぁこういう部分を考慮しなければ「なんで歩かせるんだよ!」という不満にもなりそうですが。

 

何度もプレイするミニゲームの演出待ちは気になりましたけどね。

バグに遭遇しなかった

クリアまでにバグらしいバグは0でした。『デス・ストランディング』でもバグに遭遇しませんでしたが、バグが出ない大作ゲームが続いたのは喜ばしい。ゲーム作りが複雑化して、発売時点でバグが残っているのは仕方ないくらいの意識でいましたが、こういう部分がちゃんとしているゲームは良いですね。

自由な難易度

難易度は4種あり、ゲーム中に変更も可能。トロフィーが獲得できなくなるなどのデメリットもなしで、完全に好みで選択できる難易度。古さを感じるゲームですが、この難易度の仕様は現代的。

ニューゲーム+がある

クリア後のデータを引き継いで、白鹿村もしくは鳥舞から再スタートできる仕様です。いわゆる「ニューゲーム+」もしくは「強くてニューゲーム」。このモードがアップデートで追加されるゲームもありますが、『シェンムー3』は最初から実装されている。

悪いところ

『シェンムー』の感想を書いた時に「レトロゲームを楽しむ感覚。現代基準で考えると、操作性の悪さ、グラフィックの悪さ、モーションのぎこちなさ、システムの不便さ、パッとしないバトル、後半の水増しのような展開、自由度の低さなどを感じます。そういう古さや不便さなど、当時の味を楽しむもの。後世のゲームに大きな影響を与えたであろう伝説的ゲームを今、改めて体験するという面白さ。」と書きましたが、『シェンムー3』もこれに近いです。過去作のシステムや雰囲気を大きくは変えず、非常にシェンムーらしいシェンムー3です。当時のファンであれば楽しめると思いますが、現代に遊ぶゲームとしては問題点も多いです。

盛り上がりに欠けるストーリー

シェンムーは全11章(16章というのは誤解)で、『シェンムー』が1章、『シェンムー2』が2章から6章までを再構成したものという事でした。『シェンムー3』に関しては「シリーズ全体の物語の進行状況は50%ほど」らしいですが、クリアした印象としては7章なのかと思う。全5部を想定しているようなので、8~11章は『シェンムー4』と『シェンムー5』になりそう。

 

正直、盛り上がりに欠けたストーリーでした。「18年ぶりにストーリーが動いたんだなぁ」という序盤がピークで、ラストにちょっと見せ場があった程度。それも繋ぎのストーリーでしかないので、クリア後も「結末がゲームでちゃんと描かれないかもしれないな……」という不安と物足りなさが残る。

 

メインのストーリーは、よくある感じの平凡に思える展開。『二ノ国II レヴァナントキングダム』の感想で「くどくないのは良いですが、あっさりし過ぎではあります」「小さな枠の中に収まっていて、なにか1点でも爆発するほどの感情は生まれなかった」と書きましたが、それに近い印象。ゲームらしい展開は作っているんだけど、その中で心を打つものが感じにくかったりして熱くなれないし泣けもしない。どの感情でもいいけど、何か1つ刺さるものがほしいと思ってしまう。
ボスも中ボスくらいの存在でインパクトが弱い。冷めちゃう演出として、ゲーム内のバトルでは圧倒してボスを瞬殺するも、その後のムービーで負ける展開。これが1回ならゲームらしいネタでもありますが、4回くらいこのパターンがある。

 

コアなファンからすれば、18年も止まっていたストーリーが動いているという実感だけで、ワクワクドキドキできるかもしれない。

退屈なミニゲームが多い

鈴木裕氏が動画『シェンムー3の世界 修行篇』の中で、馬歩のミニゲームに関して「今どき世界でこれより退屈なゲーム……退屈って自分で言っちゃいけないですね(笑)」と言っておりましたが、ミニゲームは開発者も自覚しているほど退屈なものが多いです。

 

同じ技を出し続けるだけの散打、×ボタンで姿勢を保つだけの馬歩、×ボタンをタイミング良く押すだけの寸拳、スティックで位置を保つだけの鶏歩、スティックで狙いを定めて×で投げる石投げ、涼の向きを見てタイミングよく×を押す薪割り、ギャンブル系はギャンブルなので多少の選択の影響はあれど最終的には運ゲー。いろんなミニゲームがあるわけですが、面白いと感じるものはあまりなかったです。良かったのはフォークリフトのアルバイトと打撃の気持ち良さがある寸拳くらいでした。

 

金策や涼の強化のために、これらのミニゲームに費やす時間は多く、あまり面白くない時間となる。今作は「つながり」を意識していて、ミニゲーム同士が連動する仕掛けもありますが、私はこのミニゲームをやり込むくらいなら他のゲームをプレイします。

 

ただ、修行が地味で退屈なのは納得できるところもあります。そういう地味な修行を日々続けて、少しずつ強くなっていくものだというリアルがある。日課の中に修行を取り入れてプレイしている人はそういう感覚を楽しめそう。

 

ゲームの大きな問題は金策で、ストーリー進行のために2000元や5000元を貯める必要がある。金策はギャンブルのセーブ→ロードが圧倒的に効率が良いので、大多数はそれをやるんじゃないかと思う。その作業は面白くはないです。でも他のミニゲームが面白いわけじゃないし効率も悪いので、あまり迷わずギャンブルのセーブ→ロードを選択する。ギャンブル以外では生薬集めが稼ぎやすいですが有限。もう少しアルバイトや闘技場での稼ぎを良くして、プレイヤーがギャンブルのセーブ→ロードに依存しにくいバランス調整をしてほしかった。このあたりはアップデートで調整があると良いなぁと思いつつも、DLCの大遊戯船で稼げるようになるのかなとも思う。大遊戯船もセーブ→ロードが定番になる気がしますけどね。

不便を感じる操作性とUI

一番の問題は会話のスキップが不便。初回の会話はスキップできません。同じ会話を繰り返した場合は一時的にでスキップできるものの、日が変わるとスキップできなくなる。何度も利用するお店では不便ですね。
会話がスキップできないのは『レッド・デッド・リデンプション2』も同じですが、個人的には良いと思えません。たしかにリアリティを追求すると会話がスキップできないほうがリアルですが、ゲームとしては不便さと煩わしさが勝る。多くのゲームでは聞きたい人はフルで聞けてスキップしたい人はスキップできるという選択ができるのに、強制でスキップ不可にするのは良い判断だとは思えません。RDR2でもそうですが、これを押しつけてもスキップしたい派の人が「やってみるとスキップできない方がリアルでいいなぁ」とはならない。不満とガマンのポイントになるだけ。
でも『シェンムー2』ではこんなテンポの悪さを感じた記憶がないような……と思って起動してみるとでスキップできていました。リマスター版のみの仕様なのかな?オリジナル版もそうならシェンムーらしさでもなんでもなく、システムの劣化や不便の押しつけでしかない。

 

引き出しを開ける操作も工程が余分に感じた。引き出しを開ける操作は、L2長押しで注視し、開ける引き出しを指定して×→引き出しに近づくので再び×L2長押しで注視して×を押した時点で開けたい意思しかないのに、もう1度×を押すのが無駄に感じる。これがシェンムーらしい操作ではあるんですけどね。この操作を使わせる捜索シーンが何度かあるので、ちょっと煩わしい。
これも『レッド・デッド・リデンプション2』の時に書きましたが、VRゲームをやった後だと、ボタン操作でこういう作業をしてもリアルさを感じない。むしろ一連の動作が鈍くてぎこちなさを感じる。

ボタンがお店やクエスト対象にアクセスする操作と手帳を開く操作になっていて被っている。暴発しやすいボタン設定。タッチパッドが空いているのだから、手帳はタッチパッドのほうが良かった。これもオリジナルを意識したシェンムーの操作ではあるんですけど、OPTIONSで選択できれば良かったのにと思う。

 

アイテムを購入する時に、そのアイテムを自分が所有しているかどうかわからないのは地味に面倒。特に技書ですね。

 

カメラの上下左右の反転は可能ですが、速度を変更できない。かなり重い操作性です。

 

私はミニマップの方角を固定したい派なのですが、『シェンムー3』にはその設定がない。そもそもこのゲームにミニマップはいらないと思った。ミニマップを導入するなら、もうちょっと便利に作る必要がある。
ミニマップがいらないというのは良い事で、マップデザインがわかりやすいし、標識も的確に配置してあるし、目印となる建物もある。ミニマップなんか見なくても迷わない。歩きながら道を覚えていくのも楽しい。

古さを感じる演出

いきなり冒頭から、歩いている途中の会話で急に立ち止まっているバストアップの視点になったり、その視点が終わるとシェンファが遠くを歩いていたり、ぎこちないカメラワーク。昔のゲームっぽさも感じます。現代のゲームなら、プレイアブルで歩きながら見せられるシーンかと思います。
家でのシェンファとの会話パターンが多いのは良いですが、その時のモーションまでは作り込めていないのも気になる。シェンファはピシッと座っていたり、ノールック編み物をしているのに、涼は立ち話とか。
シュールな間(ま)があったりもして、会話イベントとゲームプレイが馴染むように洗練されてきている現代のゲームと比べると、演出に古さや稚拙さを感じる。そこまでこだわる予算がなかったのも理解できますけどね。そう考えると、モーションまでは作り込めない中で、会話の豊富さで楽しませてくれる選択は良いとも思える。

機能しているとは言えない食事システム

今作は時間経過で体力が減少していきます。食事か睡眠で回復できる。

 

これはほぼ機能してないと感じた。時間経過で減る体力を大量に所持している食べ物で定期的に回復させるだけ。リアルさもまったくなくて、生活の中に食事が含まれているとは感じにくい。空腹ゲージとかじゃなくて時間経過で減少する体力を回復アイテムで定期的に回復させるだけです。さほど不便にも感じず、ただただ機能していないなという印象。
食べ物の価格も気にする必要性は感じず、テキトーに買いだめしていれば問題なかったです。

 

もしかしたら当初の予定は違ったかもしれない。美味しそうな飲食店が多数あるのに、そこで座って食事をするシステムはない。本当はそういった飲食店で食事がとれるようなシステムも構想にあったのかもしれないと思わせる。
鳥舞の街は素晴らしく、観光スポットとしては最高級の舞台なので、そこで食事が楽しめれば最高だったのにと思う。あの場所にいて手持ちのアイテムを使用するだけでは味気なくてもったいない。

魅力がなくなったガチャガチャ(グルッパ)

『シェンムー』の代表的なアイテムの1つであるガチャガチャ(ゲーム内ではグルッパ)ですが、今作は魅力を感じませんでした。

 

ガチャガチャは全30シリーズあり、各5~8種類あります。セガのゲームではなくなった事により、ゲーム関係はシェンムーが2シリーズとゲーム機が1シリーズの合計3シリーズのみ。残り27シリーズはボールとかラケットとか引きたい魅力を感じないものばかりで、一部はモデリングも大差ない水増しのようにも見える。

 

シリーズ毎に各5~8種類ある中で、1種だけレアな物があり、確率は0.5~1%くらいだと思います。139回目で入手した物もありました。このレアな物がサブイベントや技書交換やトロフィーに関わってきますので、そういう部分もやり込もうとすると大変な苦労となる。レアな1種を当てるためだけに手動で100回以上ガチャを回して不要な物を引き続ける作業を何度もやる事になり、この確率設定は面白くないので失敗だと思う。全体の中で1個か2個くらいなら激レアを狙う面白味も感じますが。
この件で思ったのは、これ作った人はガチャ=スマホアプリの感覚なんじゃないかという事。大金を注ぎ込んで100回以上ガチャを回して当たりの1点だけを狙うのはスマホのガチャっぽい感覚。カプセルトイのアナログなガチャの魅力とはズレている気がする。私はスマホアプリのガチャが好きではないので、そういう方向性の設定に思える『シェンムー3』のガチャも魅力を感じない。


こういう設定が上手くないのは「魚を1000匹釣った」というトロフィーからも感じられ、これを実際にやろうとすると釣りだけに集中しても20時間はかかると思います。もちろん発売3日程度ではトロフィー獲得率は0%。しかし今後も、ほぼ誰もやりたくないと思える苦行だと思います。おそらく開発者も含めて。ニンジンのブラ下げ方が上手くない。

パッとしないバトル

『シェンムー I』の感想で「パッとしないバトル」と書いていましたが、これも「シェンムーらしさ」なのか、今作もクオリティの低いバトルとなっています(初代『シェンムー』はバーチャファイターのエンジンを使っていて、当時としては優れていたんだと思う)。技の繋がりや体勢の変化が上手く作れていない不自然な動きと、単純なAIによる単純なバトル。『シェンムー』としてはこれでも良いのかもしれませんが、現代のバトルアクションとして見ると残念な出来。
こうなった原因として、前作までは『バーチャファイター』のエンジンも活用して作っていたのですが、『シェンムー3』ではゼロからエンジン作ったという事情もある。

 

ただ、AIが単純がゆえに簡単なのでストレスを感じず、爽快にボコれるバトルとしては良いです。間違いなくチープですけど、個人的にはそこまで嫌なものでもなかったです。


アクションRPGっぽくなったというか、涼の攻撃力と体力のレベル上げが重要なので、それをやらないと難しいと思う。


気になった点として『シェンムー I&II』には存在した投げが廃止されています。これも『バーチャファイター』のエンジンが使えなくなった影響。
芭月流柔術なのに投げや極めがないのは不自然に思えますが、今作はクンフーの修行に徹するものとして投げを封印したと考えたい。ストーリー的には無理がありますが。

動きが鈍い涼

最近のゲームはパルクール的な動きができるものも多いですが、『シェンムー3』の涼は鈍い。草木の隙間が通れなかったり、またげるような段差に引っかかる。これも従来の『シェンムー』のまま。

好きじゃないQTE

昔のセガのゲームにあったとは言え、QTEという言葉を定着させたのは『シェンムー』なんじゃないかと思います。『シェンムー3』にもQTEがありますが、個人的にはQTEが好きじゃないです。

 

現代ではQTEはゲーム業界の嫌われもの。ステルスアクション『Thief』では発売前トレーラーにQTEのシーンがあり、それがユーザーから抗議を受けて完全廃止となったのが象徴的な出来事。プレイしてもいない発売前ゲームでも、QTEがあるというだけで抗議され廃止に追い込まれる。
QTEの悪例と言えば『バイオハザード6』も有名。これも非常に評判が悪くて、最終的にはアップデートされ、QTEを放置してもゲームが進むようになった。

 

未だにQTEを導入するゲームはチラホラありますが、導入の仕方に工夫が感じられます。1つは入力時間が易しめで、ほどほどの緊張感と入力成功の気持ち良さを与える演出としてのQTE。もう1つはQTEに失敗しても次の状況が少し不利になる程度で、やり直しを強いないQTE。これらは嫌われものにはなりにくい。即死QTEみたいなのが嫌われやすい。

 

『シェンムー III』は最近のゲームと比べてQTEの入力時間が短めで、QTEのアクションとして歯応えのある設定。集中して素早く反応すればギリギリ間に合うので、アクションゲームとして緊張感がある設定と言える。
失敗した場合、ロード待ちなしで直前からリトライできる。表示されるボタンは同じなので、1回目はボタンを覚えて2回目でそのボタンを連打していれば誰も突破できる。

 

詰まる要素ではないけど、つまらない要素となっているQTEと感じた。QTE中のムービーは面白く作ってあったりするけど、即死QTE系のやり直しは演出として冷めちゃう。現代のやり直しを強いないQTEの導入理由を改めて感じる。ただ、QTEの場面がそんなに多いわけではないので、そこまでゲームの足を引っ張っているとは思わない。

「らしさ」だけでは厳しい

本作はシェンムーらしいシェンムー3という事が最大の魅力であるとは言え「らしさ」で全肯定するのも停滞と衰退を生むと思います。『モンスターハンター:ワールド』がカプコン史上最高に売れたゲームになれたのも、それまでのモンスターハンターらしい仕様を引っ張り続けず、世界基準のゲームに生まれ変わった事が大きいと思う。今回は18年ぶりの新作という事で「らしさ」が思い出を刺激して魅力として受け入れられやすかったと思いますが、今後は厳しくなるのが見えている。そもそも『シェンムー』に比べて『シェンムー2』は大幅にセールスが減少しているし、もう少し違った魅力もほしい。


『シェンムー3』も優れたロケーションと人々の命の吹き込み方による世界の存在感は素晴らしいけど、退屈なミニゲームとチープな戦闘を繰り返すのでは肝心のゲームプレイにおいて面白くない時間が長くなる。これはこのゲームの根本的な問題と言える。特に今作は各ミニゲームに「つながり」を持たせた事により、ミニゲームをプレイする必要性が増した。これは私は良くない仕掛けだと思っています。退屈なミニゲームをゲームの主軸に紐づけるような仕掛けは好ましくない。
元も子もない事を言うとNPC1人1人に命を吹き込むよりも、メインストーリーがめちゃくちゃ熱いゲームのほうが満足度は高いとも思うから、メインストーリーの弱さも大きなマイナスポイントになっている。
金策のバランスとか、ガチャのバランスとか、トロフィーのバランスとか、全体的なバランス感覚の悪さもある。ガチャとトロフィーはスルーすれば良いですが、メインストーリーに大きく関わる金策は再調整してほしいところ。
ハリボテではなく、骨組みは他のゲームが遠く及ばないほどガチガチに作られている印象ですが、それを生かした装飾が足りていない感じ。
「らしさ」という言葉でごまかさず言えば、過去作と同じ流れでユーザー減少の方向に向かっているようにも思う。コアなファンも抱えていて一定数の絶賛を得られるでしょうけど、現代でこの内容では離れていく人も多くなりそう。『4』があるなら、素晴らしい世界の存在感を生かして一皮剥ける何かが欲しい。

 

ゼロから作ってここまでシェンムーらしいシェンムー3を作れたのだから、開発の下地がある次回作は、さらに大きな期待ができます。良い部分も悪い部分も強く感じたゲームですが、次回作がプレイしたいと思えるゲームなのは間違いない。

2003年に出るはずだったシェンムー3のような

ドリームキャスト版『シェンムー』は1999年12月29日に発売、『シェンムー2』は2001年9月6日、今回の『シェンムー3』は2003年に出るはずだった『シェンムー3』という感じです。もちろんグラフィックとか技術的な面は2019年のものですが「もし2003年にシェンムー3が出ていたらこうなっていた」というイメージにピッタリな感じ。

 

私は日々進化している最新のゲームが大好きなので、『シェンムー3』を現代的な基準で見て悪いと感じる部分を無理に擁護する気もないし、新規ユーザーにはオススメできない。一方で、この2003年に出るはずだったと思えるような、良くも悪くも「シェンムーらしいシェンムー3」を作ったのも今回は良い判断だったんじゃないかと思う。
悔しさすら感じます。私は『シェンムー』をプレイしたのが昨年のリマスター版が初なので、当時の体験とか18年越しの思い入れがない。18年振りの新作ですが、2019年に合わせてリメイクされたような新・シェンムーではなく、2003年のオリジナルと言えるような『シェンムー3』がプレイできるなんて羨ましい。
これは他のゲームでも想像できると思う。10年以上前に好きだったゲームで、そのゲームの続編がオリジナルに近い形で出た時の嬉しさ。現代的に刷新されて印象が変わるよりも、当時の形に近いほうが喜べるものもある。『シェンムー3』は、そういう狙いが見事に当たっているんじゃないかな。

 

メタスコアは69点(8件)で、高い評価は「体は100%シェンムーでできています」というIGN Japanのクラベ氏のみ。この結果も納得できるところ。1999年当時のシェンムーファンかどうかで、評価は大幅に変わると思う。ユーザー評価が高いのも、ファンが求めていたものを出す事に成功しているんじゃないかなと思う。もちろんファンの中にも現代的なスピード感や利便性を求める人もいるでしょうけど。

シェンムーらしいシェンムー3、これが好きか嫌いかは割れると思います。高評価も低評価も率直なものだと思うし、どちらも否定できない。昨年のリマスター版から『シェンムー』を始めた私は半々ですけどね。シェンムーらしさがはっきり感じられる新作であった事への喜びもあり、現代基準のゲームとして改善してほしい部分も多々あり。特にPS4版『シェンムー2』がで会話スキップできるんだから、『シェンムー3』もアップデートで対応してほしいのは強く言える。Twitterでも不満の声がチラホラあるけど、こんな事で評価を落とすのはもったいなさすぎるし、ここが改善されれば快適さが劇的に変わる一手になる。

 

何にしても唯一無二と言える個性を持ったゲームをプレイするのは刺激があって楽しい。『シェンムー4』も出てほしいけど、どうなるか。続きが作れるかどうかの重要なポイントである全世界でのセールスは気になりますね。SNSだと日本の反応は静かな印象ですが、海外にファンが多いとも言われる『シェンムー』ですから、海外でどうなのかが重要そう。


いろいろなゲームをプレイしている中でも『シェンムー3』はいろいろ感じて考えさせられる事が多かった。多数の不満点があっても引き付けられる強烈なパワーがある。「本当に好きな人には嫌いなところを10個言える」みたいな根っこの部分を好きになっちゃう魅力か。次はどんなシェンムーが描かれるのか見てみたい。

 

シェンムーIII - リテールDay1エディション - PS4

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